社会活性化トレーダー、ぴんころ研究所のかずきです。
モノ言う株主。
何年か前から経済ニュースにおいて この言葉を聞くことが多くなりました。
この「モノ言う株主」という言葉。
聞くたびに非常に違和感を覚えます。
自らの意見を表明することは、株主として間違った行為ではないはずです。
それなのに、さも間違ったことをしているように報道する。
なぜ日本ではこんなことを言うようになったのか、考えてみたいと思います。
モノ言う株主と(普通の)株主
そもそも、モノ言う株主とはどんな人達を指すのでしょうか。
モノ言う株主(アクティビストともいう)とは、経営者に対して、コーポレートガバナンス(企業統治)の改善など何らかの提案を行う株主のことを指します。
マスコミなどで報道されるのは、経営陣と敵対する一部の特殊な投資家です。
一口にモノ言う株主といっても様々あって、
- 企業の持つ資産を売却して1~2年で撤退する短期目線のファンド
- 企業と共に企業価値の向上を目指して5~10年の長期で利益を回収するファンド
- 年金・保険会社などの超長期で株式を保有するファンド
などがあります。
2や3については、報道しても面白みがないので、報道されるのは1のみになります。
では(普通の)株主とはどういう人のことを言うのでしょうか?
株主とは会社に出資(お金を出す)して、株券(今はすべて電子化されている)を受け取った人のことです。
株主とは会社の持ち主になることなので、株主として様々な権利を持ちます。
その中に、会社の経営者に対してモノを言う権利も含まれます。
以下、株主の主な権利をまとめてみます。
■配当金・・・自分が持っている株式の数に応じて会社の利益の一部を配当としてもらえます。
■議決権・・・株主総会で意見を言ったり重要な決議で投票できたりします。
(例:役員の選任・解任、会社のルール変更など)
■株主優待・・・自社製品や施設利用券などがもらえます。
※全ての会社が行っているわけではありません。
出典:東証「経済教室」
株主になると、その持ち分に応じて配当を受け取る権利を得ます。
業績が良ければ配当も増えますし、株価も上がってさらなる利益を得ることができるかもしれません。
ただし、いいことばかりではなく、業績不振で配当がなくなることもありますし、上場廃止で株価がゼロになることだってあります。
例えば、株を買うために50万円出資していれば、株数に応じた配当金を受け取ることができる代わりに、株価が暴落して上場廃止になれば、最悪で50万円を失うかもしれません。
このように、株主になると相応のリターンとリスクがあります。
その見返りが、配当金を受け取ることであったり、経営者に対してモノを言うことができる権利です。
一般の人でも、株主になればモノ言う権利が発生します。
日本の特殊性
上記のように、モノを言う権利が株主にはあります。
それなのに、「モノ言う株主」って変ですよね。
株主はモノを言ってはいけないのでしょうか。
そんなことはありませんん。
日本でことさら、モノ言う株主が話題になるのは日本独自の背景があるように思います。
それは総会屋の存在です。
今現在は下火になりましたが、かつてはその存在は絶大でした。
少数の株券を保有して株主の権利を濫用し、株主総会の議事を妨害したり、様々な手段で企業から金銭をせしめる。
暴力的な行為をとることも多い総会屋ですが、では総会屋が一方的に悪いかというとそんなことはなくて、企業も総会屋を利用しながら、持ちつ持たれつの関係を築いていました。
私がかつて勤めていた証券会社も、関連したいくつかの不祥事をおこしています。
証券会社だけでなく、新聞社などのマスコミも当然、無関係ではありません。
以前は、必要悪として存在していた総会屋ですが、1970年代後半からの厳しい取り締まりにより、必要悪から悪に変わっていきました。
株主の権利を濫用し、社会の秩序を乱した総会屋。
そのイメージが強く残りすぎて、モノを言う株主に対して過剰反応しているのでは。
あつものに懲りてなますを吹く。
違和感の正体は、日本社会の過剰反応のように思います。
まとめ
以上、「モノ言う株主」という違和感について考えてみました。
「モノ言う株主」は、別名アクティビストとも言われます。
ほとんどは経営者と協力関係を築いて、企業価値を上げるための提案を行っています。
実際、経営不振に陥った後に、アクティビストと共に企業価値の向上に取り組み、再度上場を果たした西武グループや、すかいらーく、オンワードなどの事例もあります。
ファンドの支援で企業価値を向上させた会社は、中小を含めれば相当の数に上ります。
モノを言う株主によって、モノ言う株主の力を借りて、数多くの企業が再生しています。
モノを言うのは株主の権利です。
偏った報道を見て、モノ言う株主のことを誤解しないでくださいね。
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