社会活性化トレーダー、相続診断士のぴんころ研究所のかずきです。
贈与をする方法として、暦年贈与と相続時精算課税制度の2つがあります。
贈与をする際は、どちらかの方法を選択する必要があります。
にもかかわらず、これまでは9割の人が暦年贈与を選んでいました。
その理由は相続時精算課税制度を選んでも節税にはならないから。
それが2024年以降は相続時精算課税制度を選ぶ人が増えそうです。
その理由を解説します。
暦年贈与とは
その名の通り、暦年(毎年)で贈与をすること。
多額の資産を一括で贈与すると、相応の贈与税がかかります。
しかし、基礎控除(年間110万円)の範囲内で行えば贈与税はかかりません。
例えば、親が子供に1,000万円の贈与をする場合、
- 一括であれば177万円の税金がかかります
- 1,000万円-110万円(基礎控除)=890万円
- 890万円✕30%(特例税率)=267万円
- 267万円-90万円(控除額)=177万円
- 暦年贈与であれば無税で贈与できます
- 毎年基礎控除内の100万円で非課税で贈与する
- それを10年間続ける
暦年で贈与することで、時間はかかりますが非課税で贈与を行うことができます。
ここで終わればなんの問題もありませんが、厄介な問題があります。
それが、生前贈与の持戻しです。
生前贈与の持戻し
相続開始3年以内の贈与については贈与と認めず、相続時に相続税を加算する制度。
この制度により、死期が差し迫ってからの贈与など、短期間での贈与が難しくなります。
上記の例であれば、すべての贈与が終わって3年経過した後に贈与者が亡くなれば、1,000万円全額贈与できます。
しかし、贈与期間中に亡くなったり、贈与した直後に亡くなれば、予定よりも少額の贈与しかできなくなります。
相続時精算課税制度とは
- 贈与時 受贈者(贈与を受ける人)が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができます
- 贈与時 2,500万円を超えて贈与を受けた場合には、超えた分の贈与額を計算して納税します
- 相続開始時 贈与を受けた財産額を相続財産の額に加算して相続税を計算します
- 相続開始時 すでに納税した贈与税額がある場合には、その相続税額から払込税額を控除します
相続時精算課税制度は、生前贈与を受けた財産額がすべて相続財産に加算されて相続税が計算されるため、基本的には相続税の節税にはなりません。
あえてこの制度を選ぶメリットは、
- 早期に次の世代に財産を移転できる
- (財産の価値は贈与時の価格で計算されるため)贈与財産の価格の上昇が見込まれる場合は相続税の負担が少なくなる
などですが、全く節税にならないことから、この制度を選ぶ人は非常に少ないのが現状です。
2024年の法改正でどう変わるのか
これまで日の当たることの少なかった相続時精算課税制度ですが、2024年の法改正で一変します。
それは、暦年課税が使いにくくなり、相続時精算課税制度がぐっと使いやすくなるためです。
暦年贈与 | 相続時精算課税制度 | |
---|---|---|
非課税枠 | 年110万円(基礎控除) | 累計2,500万円(特別控除) ★年間110万円の基礎控除を新設 |
相続発生時の贈与財産の取り扱い | 死亡前3年以内は相続税に加算 ★7年以内が加算対象に変更 | 特別控除枠はすべて相続税に加算 ★基礎控除分は加算しない |
★の部分が2024年1月1日以降の改正点
暦年贈与の持戻し期間が3年から7年に伸びたことで、暦年贈与を選択して計画的に贈与を行うことがよりいっそう難しくなりました。
その反面、相続時精算課税制度に年間110万の基礎控除枠が新設されたので、暦年贈与よりもメリットが出てきました。
それどころか、2024年以降は相続時精算課税制度のほうが、贈与するには有利とさえ感じます。
まとめ
2023年現在、相続時精算課税制度についてはほとんどメリットがありません。
暦年贈与のほうが、持戻しのリスクがあるとはいえ非課税で贈与できる部分があるので、こちらを選ぶ人が多いのはうなずけます。
しかし、2024年以降はその状況が大きく変わりそうです。
年間110万円の基礎控除という、暦年贈与のよい部分が取り入れられたのは非常に大きいです。
税金の制度は定期的に変わるのでなんとも言えませんが、今後しばらくは贈与は相続時精算課税制度一択で良いのではないでしょうか。
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