年金問題の誤解 ~少子高齢化が進むと年金は破綻するのか~ 

年金

ぴんころ研究所のかずきです。

 

少子高齢化で年金の支え手が減っているから、年金は近い将来破綻する。

若い人は年金を払っても、払った分はもらえない。

日本は借金大国なので、年金を払い続ける余裕はない。

 

年金不安を訴える記事は、数限りなくあります。

政治家(主に野党)、メディア、金融機関などはこれでもかと不安を煽ります。

確かに、高齢者が増える一方、若い人がどんどん減っています。

だから、そこに疑いを挟む余地はないように思います。

 

でも、よく言われるような少子高齢化が主な理由で年金は破綻する可能性はほとんどゼロです。

その理由を解説します。

実は日本の年金制度は、諸外国に比べても非常に健全なんです。

年金が破綻するという最大の論拠

現役世代が納める保険料で、その時々の高齢者世代に年金を給付する。

この世代間の支え合いによって公的年金制度は成り立っています。

これを賦課方式といって、日本を含むほとんどの国がこの方式を採用しています。

現役世代から高齢者への仕送りという形です。

だから、仕送りする人が減れば、仕送りはストップするのではないかと言われている訳です。

高齢化社会を表す概念として、

  • 多くの現役世代でお年寄りを支える「お神輿型」
  • 3~5人の現役世代でお年寄りを支える「騎馬戦型」
  • 1人で1人のお年寄りを支える「肩車型」

に変化している図が使われます。

これを見せられると、なるほどこれでは年金はとてももちそうにない、となります。

これ自体は間違いではありませんが、本質がずれています。

年金が破綻しない理由

1 年金を負担する現役世代は増えている

前述のように、受給する年金の原資は、現役世代の保険料です。

現役世代とは、単純に年齢で区切ったものではなく、要は保険料を払っているか否かです。

20~60歳の人が現役世代とされていますが、それはあくまでも国民健康保険料を負担する期間のことに過ぎません。

60歳を超えても、会社に勤めていれば70歳未満までは厚生年金保険料を負担しています。

保険料を負担しているのではあれば、60歳を超えていても現役世代です。

 

昨今は人生100年時代。

60歳で定年を迎えても、会社に雇用される人は増え続けています。

労働人口に占める65歳以上の割合は、1970年には4%程度しかありませんでしたが、現在は13%近くまで上昇しています。

それに加えて、女性の就業者も、昔に比べれば比較にならないくらいに増えています。

そういうこともあって、

「何人の働いている人が、何人の働いていない人を支えているか」

という視点で見ると、お神輿型と言われる1970年代から肩車型と言われる現在まで、1人の就業者が支えるのは1.0人前後の非就業者になり、さほど大きな変化はありません。

 

つまり、昔は担がれるお神輿に乗っていたであろう高齢者や女性が、いまは支える側に回っているのです。

2 支払われる年金のうちの自己負担分は約半分

会社員や公務員が加入する厚生年金は労使折半負担です。

加入者と会社が半分ずつ保険料を負担します。

これはよく知られていることと思いますが、実は主に自営業者が加入する国民年金も、加入者の負担は半分になっています。

65歳以降にもらう年金のうち半分は、国庫負担金、つまり税金です。

国民年金には免除制度や納付猶予制度がありますが、免除や猶予の期間を含んでいても、通算で10年の納付期間があれば年金を貰う権利が発生するのはこのためです。

自分が払い込んでいない期間分は、国庫負担金の分だけもううことが出来ます。

 

公的年金加入者(保険料を払い込んでいる人)が払い込んだ保険料だけで成り立っていたら、加入者が減れば減った分だけ年金原資が減るので大変ですが、国や事業会社を含めた社会保険となっているので、破綻する可能性は低くなります。

3 健全な年金財政

国の財政赤字は約1,000兆円。

こう聞くと年金は大丈夫なのか、となりますが、年金に関しては、国の一般会計とは別勘定になっています。

公的年金については、年金積立金というものがあり、その額はなんと約190兆円を超えます。

基本的に、年金給付は、現役世代が納める保険料+国庫負担金で成り立っています。

ただし、年度によって多少の過不足が出るので、そこをこの積立金で調整します。

そのバッファーが190兆円もあるのです。

 

しかもこの積立金は運用されています。

年金積立金管理運用独立行政法人という組織が運用しており、2001年以降年平均で3.5%、20年で101兆円ほど積立金を増やしています。

101兆円の年金積立金だけで、年金給付を約5年賄う事ができます。

そもそも、この積立金はあくまで過不足調整のための資金です。

現に、イギリス・フランス・ドイツなどは年金積立金はほとんどありません。

 

例えて言うと、5年分の生活費の余裕がある家計です。

毎月の仕事の収入があって、生活費の5年分の蓄えがある。

いかに健全であるかがわかると思います。

まとめ

以上、年金が破綻しない理由を3つあげました。

高齢者が増えているのは事実ですが、今は高齢者=年金受給者という構図ではなくなっていること。

現役世代が支払った保険料だけで、年金受給者を支えているのではないこと。

年金積立金というバッファーが他のどの国よりも潤沢にあること。

だからといって絶対に破綻することはないとはいい切れませんが、現状破綻する可能性は限りなくゼロに近いと思います。

 

悪意としか思えないようなメディアの情報ばかりに触れていると、本当の姿が見えなくなります。

不安を煽れば関連する金融商品を販売している、銀行・保険・証券会社などが儲かります。

当然、それに関連する書籍や情報商材も売れます。

ただし、実際に年金をもらい始めるまでは、年金は本当にもらえるのだろうか、と誰でも不安になります。

だから、一概にメディアが悪いとは言えません。

ある意味仕方がない面もあります。

 

重要なのは、受け取った情報を鵜呑みにするのではなく、一度自分で調べてみることです。

焦ってぼったくりの金融商品に手を出したり、年金はもらえないと諦めて保険料を全く納めない、ということのないように気をつけましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました