【本の紹介】 『七十歳死亡法案、可決』(垣谷美雨)

ぴんころ研究所

こんにちは。

ぴんころ研究所のかずきです。

 

70歳死亡法案、可決。

衝撃的なタイトルです。

 

増え続ける医療費、介護の負担、

老後資金不足、年金の問題など

現代日本が抱える数々の問題。

こんな法案があったら一気に解決される!!

そんなことを思いながら、

一気に読んでしまいました。

 

小説というIFの世界ですが、

設定が設定だけにリアリティがあります。

これを読むことで、

自身の生き方を考え直すきっかけになるかもしれませんよ。

本の概要

70歳死亡法案とは

日本国籍を有するものは誰しも

70歳の誕生日から30日以内に死ななければならない。

政府から安楽死の方法が数種類用意されていて、

対象者はその中から自由に選べるように配慮されています。

 

あなたの人生は残り何年ですか?

あらすじ

この法律の施行を2年後に控えたところから

物語は始まります。

 

姑の介護に疲れ切った専業主婦の東洋子は

長年の介護から合法的に解放してくれる、

この法律が施行されることに喜びを感じます。

自分に残された時間は15年。

その貴重な時間を奪ってきた介護が残り2年で終わる。

倫理的にどうかはさておき嬉しくないはずがありません。

 

それもそのはず東洋子は疲れ切っています。

就職に失敗して引きこもりの息子。

家のことに無関心になった娘。

そして何事にも非協力的な夫。

家族の人生が壊れかかっているのは明白なのに、

誰もそのことに向き合おうとしません。

 

この70歳死亡法案が可決されると、

連日のようにワイドショーに取り上げられて、

老若男女を問わず、

自分の生きる意味を考えるようになります。

そのような中で家族のそれぞれに変化があり、

それぞれが新たな一歩を踏み出すことで、

家族の関係に、

そして日本国内全体でも、

前向きな変化が生じてきます。

感想

医療にしろ、介護にしろ、

年金にしろ、全て高齢化社会の歪みである。

だから、高齢者がそもそもいなくなれば、

このような問題がそもそも存在し得ない。

不謹慎かもしれませんが、

この小説に出てくるような法律があったら良いのにな、

と思ったことはありました。

なぜなら、

有権者が多い高齢者の政治的影響力が強くなる

いわゆるシルバー民主主義は、

若い人が割りを食う社会です。

高齢者は高齢者であるという特権を振りかざして

若い人に負担を強いている。

そんなふうに感じていたからです。

 

でもこの本を読んで見方が変わりました。

この本の中でこんな箇所があります。

こないだPTAの仲間とも話したんです。子供に対する国からの手当は要らないんじゃないかって。だって国の将来を考えると、こんなものもらっていいんだろうかって。お金持ちには取るに足らない額だし、貧困な家庭には焼け石に水みたいに少ないし。だけど、全国規模で見ると数兆円にもなるんでしょう?もとは税金なわけでしょう?もっと有意義なことに使ったらどうかって思うんです。でもね、みんな口ではそう言っても実際に受け取らない人なんていません。仲間内で1人だけお金持ちの社長夫人がいるんだけど、彼女だってきちんと申請して受け取ってますもん。で、私思うに、みんながもらっているからもらわなきゃ損、みたいな考えってどうなんだろうって。損とか得とかって言葉自体、あんまり上品じゃないなって。そんなことつらつら考えてたら、最近急に年金を返上する老人が増えてきたって知って、やっぱり老人て尊敬できるかもって初めて思いました。ためしに今年度分の児童手当だけでも児童養護施設かなんかに寄付してみようかと夫と話し合ってるんです。

また、70歳を超えている老人たちの中でも、

自分たちが長寿を全うしても、

国が立ち行かなくなることがないように、

年金を返上したうえに、

不要なものを売り払って、

その全額を使い道を限定して国に寄付する、

ということをやり始めます。

そうやって、

若い人だけでなく高齢者も、

それぞれの立場でできることを考え、

できる範囲で実践していけば、

国家財政は安泰なのではないのか。

 

高齢者を悪者にして、

若者が割を食っている、

というのも一つのプロパガンダです。

本当は高齢者だけでなく、

誰もがそれぞれの立場で、

自分が有利になるように、

振る舞っているだけような気がします。

 

「幸せに自分の人生を生ききる」

という事を考える上で、

非常に参考になる本でした。

なにより面白いですよ。

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